40通りの生き方について
先日、東京・虎ノ門にある「Tokyo Node」で開催された展示イベント「TOKYO ROOMS」を見てきました。
TOKYOROOMS展 〜40の部屋、40通りの生き方〜 | TOKYO NODE

「6帖1間」という同じ制約の中で、40組のクリエイターがそれぞれの”部屋”を自由に表現するという企画です。
出展者は建築やインテリアの専門家だけではなく、芸能人・著名人、インフルエンサー、プロゲーマー、元サッカー選手など、ほんとうに多種多様。
例えば、真っ白に統一されたミニマルな空間。 それに対して真っ黒な部屋。
室内に木々を持ち込み、砂利と植物が床を覆う森のような部屋。
藤の花が天井から降り注ぎ、シャンデリアと絡み合う幻想的な空間。
ウイスキーのコレクションに囲まれた大人のラウンジ。 黒を基調にしたシャープなキッチン。
古着やアートブック、衣装が無造作に重なり合う、まるで誰かの人生の1ページのような部屋。

この展示会の前には専門家向けの展示を見てきて、それはそれで感銘を受けたのですが……。
この40部屋に込められた熱量や独創性、おそらく普段は建築に触れていないであろう来場者たちの笑顔や振舞いには、なにか言葉にならないエネルギーをもらった気がします。

同じ「6帖」が、こんなにも違う世界になる。
友人たちと見ていて笑い合いながら気づいたのは、「いい部屋」には必ずしも正解がないということです。
むしろ、SNSで”いいね”が多い部屋をなぞるより、少し笑えるくらい振り切っていたり、「こんな趣味の人がいるんだ」と驚かされる部屋の方が、ずっと記憶に残りました。

もちろん、住宅を設計するうえで不正解にできないことはあります。
構造や断熱、防水、耐火性能——安全や快適さに関わる部分は、専門家としてきちんと担保しなければならない領域です。
でも、それ以外の部分は——仕上げの素材、色、家具の選び方、何を飾るか——これらは極論、やり直しや試行錯誤が可能な部分。
正解が曖昧だからこそ、住まい手自身の感性が素直に出てくる場所だと思っています。

家を建てるとき、「失敗したくない」という気持ちは当然です。だからつい、評判の良い事例を参考にして、組み合わせて。無難に、飽きがこないように、まとめたくなる。それはもちろん、ひとつの正解です。
ただ、その家に長く暮らしていくのは、あなた自身です。
「これが好き」「なんとなくこういう感じが落ち着く」「こうしてみたい」——正解・不正解にとどまらない、そういう感覚は、検索で探せるものではありません。
そのような声も、私たちは、大切にしていきたい。
私たちの仕事は、性能や安全を確かに担保しながら、専門家としての補助線を引かせていただき、そこから先の「あなたらしさ」をかたちにするお手伝いをすること。設計の打ち合わせは、そのための対話でもあります。
TOKYO ROOMSを見終えて、改めてそんなことを考えました。
「40通りの部屋」は、40通りの生き方であり、価値観でした。
住まいづくりは、誰かの正解に助けられるだけじゃなくて、もしかすると、ひとりひとりの感性を少しずつ育てていく過程でもあるのかもしれません。
家づくりを考えていらっしゃる方は、スマホに釘付けになっての情報収集だけでなく、ぜひ、「好きなもの」や「なんとなくこういう感じ」という曖昧な言葉やイメージから、ざっくりと、大切な人たちと会話しながら始めてみていただくのも、きっと楽しいんじゃないかと思ったりします。
お読みいただきありがとうございました。



























